こんにちは。
前回のブログでは、怒りや失望が生まれる「期待値」についてお話しました。
今回は、先日私が行なったセールス研修での出来事を通して「現状維持バイアス」について考えてみたいと思います。
先日、私が行なった自動車メーカーでのセールス研修は、中堅からベテラン層の実績が芳しくない営業マンが対象でした。
その日は一日研修だったため、朝一の研修スタート時点で参加者対象者全員から、現状抱えている問題、課題を伺う時間をたっぷりと作りました。
その際、彼らからは色々と率直な感想を伺うことができました。
その中で多くの方が口にしたことは、改善策を模索していながらも「なかなか自分のルーティンを変えることができないで困っている。」や「ずっと自己流でやってきたので変えたいと思っているが、今更変えられるかが不安。」という声でした。
こうした声を聞いている中で、私はある種の違和感を覚えました。
それは、彼らは自身の実績からも「変えなければいけない」とわかってはいながらも、“不安”や“変えられていない現状”を口にすることで、実際には「自分は変えない!!」と宣言しているようにも聞こえたのです。
勿論、変化に対して不安を持つことは自然なことです。
「現状維持バイアス」という人間特有の心理的な傾向が、彼ら自身の言動に影響を与えているのです。
最初に強調したいのは、そもそも人間は「変えられないのが当たり前な生き物」だということです。
人間はバイアス(思考の偏りや認知・認識の歪み)がかかる生き物であり、それは決して悪いことではありません。
私たち人間には「一秒でも長く生きる」という遺伝子レベルで組み込まれた、生まれ持った生存本能があります。
つまり、少しでもストレスを避けようとする行動(言動)です。
これが「現状維持バイアス」です。
つまり私たちの脳は、現在の状態を維持することが最も安全で、リスクが少ないと判断するため、変化を避けようとするのです。
これ自体は、人間が長い歴史の中で生き延びてきた防衛機能なのだと思います。
しかしこの現状維持バイアスが、私たちは変化の必要性に気づきながらも、行動を起こせなくなってしまう大きな原因なのです。
“変わることのリスク”や“不安”ばかりに目を向けてしまい、結果的に今のやり方に固執してしまうのです。
特に、長年にわたり自己流のやり方で成果を上げてきたベテランの営業マンほど、このバイアスに強く影響される傾向があります。
彼らは自分の方法に自信を持っているが故に、「今更変える必要はない」「変えたら失敗するかもしれない」という考えが頭をよぎり、このようにして変化への抵抗感が強まってしまうのです。
この状況は、ある意味で非常に理解しやすいものです。
たとえば、私たちは慣れ親しんだ日常や仕事のルーティンを守ることで、安定感や安心感を得ています。
そのため、新しいことに挑戦する際には必ず「未知の領域」に足を踏み入れることになり、それが心理的な負担「ストレス」となるのです。
まずは、「現状維持バイアス」が自然な現象であり、誰もが抱えるものであることを理解することです。
つまり、その存在を自身で認めることです。
これを理解することで、自分が変化を恐れていることに気づくのです。
そして、その恐れに支配されて行動を起こさなければ、結果的に自分の成長を止めてしまうことを理解することです。
次に重要なのは、「どうやって新しいことを取り入れていくか」を“考えて動いてみる”ことです。
変化に対する抵抗感を和らげるためには、無理をして大きな変化を一度に求めるのではなく、少しずつ小さなステップから始めることも有効です。
たとえば、新しい営業手法を一度に全て取り入れるのではなく、まずは一つの小さな手法を試してみる。
この「行動に移すこと」が非常に重要です。
変化を頭の中で理解するだけでは不十分で、実際に動くことで初めて変化を体験し、学び、そして慣れていくことができます。
人間は実際に経験することで、自分の思考や行動パターンを変えることができるそうです。
最初は不安や抵抗感があっても、一度行動を起こせば、その後は意外とスムーズに変化に適応できることも多いのです。
現状維持バイアスは、私たちが自然に抱える心理的な壁ですが、それを乗り越えることができれば、間違いなく大きな成長の機会を得ることができます。営業マンとして、そしてビジネスパーソンとして成功を収めるためには、常に自分自身の成長を促し、環境の変化に柔軟に対応することが求められます。
今回のセールス研修を通して、私自身も多くのことを学びました。
変化への抵抗を感じている人々の中には、実は自分でも気づいていない「変わりたくない」という気持ちが潜んでいることが多いのです。
それに気づき、どうすれば変化を前向きに受け入れられるかを考えることで、営業活動や日常業務においても新たな可能性が広がるはずです。
ぜひ、ご自身の「現状維持バイアス」について考えてみてください。
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